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9枚の写真、1つの視点 藍嶋しお

写真家が切り取った9つの瞬間と、そのまなざしをたどります。何を見つめ、何を感じ、なぜその一瞬を残したのか──写真と言葉を通して、その世界にそっと触れてみてください。

写真家プロフィール

藍嶋しお

2003年生まれ。北海道在住。”何気ない日常に潜む美しさ”をテーマに、四季を感じさせるモチーフや景色を撮影。昔と現代の美の感じ方に関心を持ち、日本の伝統色や季語と写真を組み合わせた作品や記事を作成しSNSを通して発信している。

① シルエット写真のようで、ほんの少し表情が見えるところが好き。まぶたの感じや、わずかに開いた口。絶妙な見え方が美しい。曇りの日の光がカーテン越しに柔らかく差し込んで、しっとりとした雰囲気がちょうどよかった。

② 「霧氷がありそうだぞ」と父が言ったので、朝6時、凍えるような寒さの中、車を出してもらって霧氷を撮りに。4回シャッターを切ったところで、あまりの寒さにカメラはフリーズ。それでもこの1枚が撮れたことが嬉しい。バケツツールで塗ったみたいな青が好き。自然の神秘と、無機質な背景。その対比にドキドキする。

③ 初めて東京に行ったとき、電車に乗り遅れて撮った写真。みんなスマホを持って、下を向いて並んでいる。同じような姿勢だけど、微妙に違うシルエットがかわいく思えた。人間そのものが写っていなくても、人の気配があるのが好き。北海道ではあまり感じられない、電車で移動する日常が新鮮でワクワクした。

④ 中学校へ行く朝、車のフロントガラスに薄く積もった雪。いつもなら日が昇るとすぐに溶けるのに、この日はまだ残っていた。とても寒くてパウダースノーのときにしか見れないので、急いで撮った。窓を開けようとしたら、ガラスが凍りついて動かない。そんな寒い朝の、真っ青な空が映り込んでいる。

⑤ 高校の廊下、夕方の光。窓から差し込む光が、毎日決まった時間にこの場所を染める。私は普段通らない場所だけど、友達を迎えにきて偶然この光景に出会った。もう少し時間が経つと光は木に隠れてしまうから、出会えたのは幸運。奥行きを感じる、放射状に広がる光や、それが白く潰れちゃった感じが好きな、iPhoneでの一枚。

⑥ 大学に入って初めての春。桜を撮るつもりで出かけたけれど、友達の目があまりにきれいで、そっちばかり撮った。顔全体ではなく、目だけにフォーカスした。まつげのまばら感も好き。

⑦ 高校2年生の夏の終わり。海が撮りたくなって、お父さんに留萌へ連れてってもらった。太陽の光が海に一本道をつくる。その光景を引きで撮っていたけれど、なにかものたりなくて、ぐっと近づいた。写真なのに、眩しくて思わず目を細めたくなる。その感じが、たまらなく好き。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA Processed with VSCO with c1 preset

⑧ 寒い朝の川。遠くの山に白くなった木を見たことはあったけれど、こんなに近くで見たのは初めてだった。圧倒される迫力。ただ「かっこいい」と思った。白銀の世界、冬の景色が水墨画みたいに広がる。指が動かなくなるほどの寒さで、記憶があまりない中、それでも強烈に残った光景。

⑨ 自分の足。中学生の頃、布団の上に寝転がっていたら、足がじんわり温かくて、見たらちょうど光が差し込んでいた。iPhoneを向けて、少し露出を上げて、光が広がる感じに。影の部分が緑っぽくなっていて、それが心地いい。何気なく撮ったのに、「お気に入りの写真はどれ?」と聞かれたら必ず思い浮かぶ、ずっと好きな一枚。