
全国のオールドレンズファンのみなさんこんにちは、こん。です!
2019年もオールドレンズが絶賛大流行中でございます。
オールドレンズの魅力といえば、現行レンズとは違った甘い描写や、レンズごとによって異なる独特なゴーストとボケ感を味わえることですよね。
タクマー、ヘリオス、プラナーなどはよく名前を聞く有名なレンズですが、ほかにもさまざまな種類のレンズが存在します。
中には隠れた銘玉(めいぎょく)と呼ばれるレンズも……。
今回はそんな隠れた銘玉のひとつで、意外と知られていないカール・ツァイス・イエナ「PANCOLAR 50mm F1.8」というレンズをとてつもなく激推しするお話をします。
CARL ZEISS JENA(カール・ツァイス・イエナ)とは
CARL ZEISS(カール・ツァイス)とは、世界トップクラスの光学技術を誇るドイツの光学機器メーカーです。
プラナーを世に送り出し、「世界のツァイス」と呼ばれるほど有名なメーカーであるため、名前を知っている方も多いでしょう。
では、CARL ZEISS JENA(カール・ツァイス・イエナ)とはなにか。
簡単に説明すると、旧東ドイツのカール・ツァイスのことです。
というのも、冷戦時代にドイツは東西に分断されたため、カール・ツァイスもふたつに分かれてしまいました。そこで差別化を図るために東側は「カール・ツァイス・イエナ」、西側は「カール・ツァイス」と名乗るようにしたのです。
東西のドイツが統合するときにカール・ツァイス・イエナはカール・ツァイスに吸収されてしまいました。そのため、名前が残っておらず、あまり知られていないのかもしれません。ただ、源流はまったく同じカール・ツァイスなのです。
そんなツァイス・イエナのパンカラーとは、ツァイスでいうプラナーに相当するレンズ。
ツァイスが有名であることからプラナーの影に隠れがちなパンカラーですが、その性能はプラナーに引けを取りません。
ではでは、パンカラーの魅力をじわじわとお伝えしていきます…!
4タイプのPANCOLAR
「PANCOLAR」には、パンカラーやパンコラーなどさまざまな呼び名がありますが、本記事ではパンカラーで統一します。
一般的に市場で流通しているパンカラーには50mmと80mmの2種類があります(非常に生産量が少ないですが75mmもあります)。
今回紹介するのは標準的な画角の50mmのパンカラー。
そしてパンカラー50mmには4つのタイプがあるのです。
①PANCOLAR 50mmF2
最初に生産された初期のパンカラー。
後に生産されるパンカラーよりも開放絞りはF2と暗く、最短撮影距離も50cmと長いです。
また、このパンカラーだけマウントが異なりエキザクタマウントを採用しています。
生産数が少なく、市場ではなかなか見かけることがない希少なモデルです。
②PANCOLAR 50mmF1.8 前期 (ゼブラ)
初期のパンカラーから開放絞りがF1.8、最短撮影距離が35cmに改良され、M42マウントとなったモデル。かわいいゼブラ柄が特徴のレンズです。
一般的に50mmのパンカラーとして流通しているのは、これ以降に生産された3タイプのレンズです。
放射線物資を含んだアトムレンズのため、多くの個体が光学系に黄変を起こしています(放射線物資といっても人体には影響がないのでご安心を……)。
デジタルカメラで使用する場合はホワイトバランスを調整できるので問題ありませんが、フィルムカメラで使用する場合は写真が黄色味がかることがあるので注意が必要です。
③PANCOLAR 50mmF1.8 後期 (ゼブラ)
見た目は前期と変わりないゼブラ柄のモデル。
アトムレンズが光学系の黄変を起こすことが判明したため、レンズ構成を変更して非アトムレンズになりました。
噂ですが、微妙に解像度も向上しているのだとか……?
④MC PANCOLAR 50mmF1.8 (黒鏡筒)
黒鏡筒に赤文字の刻印で「MC」と記載されたモデル。
僕が愛用しているパンカラーはこのタイプです。
かわいいゼブラ柄の見た目から一転、とてもかっこいいです……。
オールドレンズの中でもかなりかっこいい見た目をしているのではないでしょうか?
僕はこの見た目に惚れてしまいました(笑)。
レンズ構成は後期と同じですが、マルチコートになった最終系のパンカラーで、MCモデルは最も写りが良いとも言われています。
また、「CARL ZEISS JENA 」や「aus JENA」など、刻印が異なる個体が各タイプに存在するので、さらに細かく分類分けされることも。
性能に大きな違いはないので、好みの見た目から選ぶことができるのもパンカラーの魅力のひとつです。
ここからは、その魅力をさらに掘り下げていきましょう!
MC PANCOLAR 50mmF1.8 の魅力
今回は僕の所有するMCモデルにピックアップして紹介していきたいと思います。
先ほども述べた通り、初期のパンカラーを除いてどのタイプにも大きな違いはないのでご安心を……。
①世界のツァイスをより安価に
誰もが憧れるツァイスのレンズ、名前を聞くだけで喉から手が出そうになってしまいます。
しかし、名高い銘玉であるだけにプラナーなどのレンズはやはり高価。
それに対して、パンカラーはプラナーよりも安価で購入することができます。
さまざまなタイプがあるため個体によって値段は異なりますが、およそ1万5,000円~2万5,000円程度で購入できることが多いです。
オールドレンズにしては決して安くはありませんが、ツァイスの描写をこの価格で味わうことができるのは大きな魅力です。
②汎用性のあるM42マウント
オールドレンズの代表マウント・M42マウントであるため、タクマーやヘリオスを始めとした多くのレンズと、ひとつのマウントアダプターのみで併用できます。
(そもそもM42マウントとはツァイス・イエナが開発したマウントなのです)
みんなで写真を撮るときにお互いのオールドレンズを交換して違いを楽しむなんてことは定番のお遊び。
さまざまなレンズを楽しみたい、なんてときにもM42マウントはとっても便利なのです。
③使いやすい標準大口径レンズ
50mmは人間の目が映す範囲に近く、実に使いやすい画角です。
この1本で撮れないものはないと言っても過言ではありません。
APS-C機で使用する場合にはやや望遠になってしまいますが、F1.8の開放絞りが抜群のボケを生んでくれます。
これらはフルサイズ機のSONY a7Ⅱで撮影した写真ですが、本当によくボケます。
ピントの合った部分はカッチリとした綺麗な描写をしているのが、さすがツァイス……。
見てください、この描写力。
オールドレンズとは思えない綺麗な写り。
これらはボケを意識した写真ではありませんが、絞り開放のF1.8で撮影しています。
レンズは構造上絞り開放で撮影すると画質が落ちやすい性質にありますが、それでも現行レンズにすら引けを取らない写りをするのは本当にすごいです。
ちなみにこのレンズは、F22まで絞り込むことができます。
プラナーを始めとした多くのオールドレンズは上限値がF16であるため、パンカラーは最も絞り込むことができるレンズでもあります。
F22まで絞り込むことはあまりないかもしれませんが、幅広く露出を調整できるに越したことはないですよね。
④ぐるぐるボケ
先程の写真でお気付きになったかもしれませんが、このレンズはぐるぐるボケます。
このような感じにぐるぐるします。
また、ぐるぐるボケは日の丸構図で発生しやすい特徴があります。
ぐるぐるボケで有名なレンズと言えばロシアのヘリオスですが、そもそもヘリオスは東ドイツを占拠していたソ連がツァイス・イエナの技術を持ち帰って開発したレンズなのです(歴史っておもしろい)。
ヘリオスの開放絞りはF2ですが、パンカラーはF1.8なのでより強烈なボケを味わうことができます。
⑤美しき赤色ゴースト
ゴーストはオールドレンズ特有の味でレンズによってさまざまな現われ方をします。
それぞれのレンズを象徴する特徴のひとつであるゴースト。パンカラーでは、赤色です。
美しいですよね……。
本当に綺麗なゴーストが入るのがパンカラーの魅力です。
こんな感じで、リングも入ります。
角度によっては綺麗なひとつの輪になり、幻想的な写真に仕上げてくれます。
⑥最短35cmの接写撮影
これもほかのレンズにはない大きな特徴です。
プラナーを始めとした50mmレンズの多くは最短撮影距離が45cmであるのに対し、パンカラーはそれらより10cmも短い35cm。
オールドレンズの中でも驚異的に寄ることができます。
これはメイヤーの50mmレンズ、オレストンなどの最短撮影距離33cmに次ぐ短さです。
これらは最短35cmまで寄って撮影した写真です。
フルサイズ機のSONY a7Ⅱで撮影しました。
トリミングをしていない状態でもここまで大きく被写体を写すことができるのです。
そして寄れる分ボケます。本当によくボケます。
APS-C機で撮影すると画角がトリミングされるため更に大きく写り、マクロ的な使い方をすることもできます。
多彩な性能を兼ね備え、さまざまな使い方ができるのがパンカラーの持ち味です。
あなたも憧れのツァイスを
高い描写力を備えている上、憧れのツァイスを少しでも安く手にすることができるパンカラー。
価格以上の性能を誇り、この1本で撮れないものはないほどの万能なオールドレンズです。
あなたも最高の1本をぜひ手にしてみてください。
それではみなさん、最高のオールドレンズライフを楽しみましょう♪
では!!
使用したカメラ
Carl Zeiss Jena PANCOLAR 50mm F1.8
キーワード
- レンズ