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写真通信 2019.07.04

【イベントレポート】海と街が共存する神秘に魅了されて。写真家・佐藤健寿が写し出す「高知」の大自然

世界各地の廃墟や建築物などを独自の目線で切り取る、写真家・佐藤健寿(さとう けんじ)さん。

代表作となった著作『奇界遺産』では、ありとあらゆる”不思議”を写真に収め、佐藤さんならではの視点が注目を集めています。

「VIVID TRIP to KOCHI」は、そんな佐藤さんが写す、高知県の自然の様子にフォーカスを当てた写真展です。

今回は、写真展の会期中である5月17日に行われたトークイベントの様子をレポート。展示されている写真の裏話や、2泊3日で行われたタイトな撮影での本音などを赤裸々に語ってくださいました。

ぜひ、写真展に遊びに来たような気持ちで、レポートと共に高知の自然を楽しんでいただけたら幸いです。それでは、さっそく!

「ロケハンなしのハードスケジュール。天候頼みだった」2泊3日の撮影を振り返る

まずは、今回の展示に向けて行われた撮影の話から。美しい景色の数々を写真に収めながらも、とにかく撮影時は時間との戦いだったと佐藤さんは本音をこぼします。

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■モデレーター 古川誠
1975年埼玉県生まれ。1998年にスターツ出版に入社し「オズマガジン」「オズマガジン トラベル」編集長を歴任。現在は「オズマガジン」統括編集長を務める。また、2012年より年5〜6回のペースで高知県を取材し、さまざまな形で高知県との関わりを持つ。

古川:今日はよろしくお願いします。今からいろいろと写真についてお話を伺っていきたいのですが、まず、高知県を訪れてみての印象っていかがでしたか?

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■写真家 佐藤健寿
武蔵野美術大学卒。フォトグラファー。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆。写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』(エクスナレッジ)は異例のベストセラーに。

佐藤:よろしくお願いします。そうですね、高知県自体は過去に2度訪れているので、漠然としたイメージはありました。ただ、改めて訪れてみて感じたのは、とにかく広いこと。

古川:もともとのイメージってどういったものだったんですか?

佐藤:まず、海があって、その近くに山があるって感じですかね。今回、撮影してみて川がすごく綺麗だなと感じました。海だけではなく内陸側でも撮影したのですが、川や洞窟があって、どれも美しい。高知県全体を巡っていると、あらゆるところに日本の自然が描写されているような印象を受けましたね。

古川:ああ、すごくわかります。撮影前から「このロケーションはこう撮るぞ」と決めてから撮影に臨まれたのですか?

佐藤:いえいえ。普通は、撮影前にロケハンをするのである程度「こう撮ろう」「こんな画角かな」と想像した状態で撮影日を迎えるんです。ところが、今回は撮影スケジュールが2泊3日のみだったので、ロケハンの時間が取れなかったんですよね。撮影場所に着いて、撮影して、撤収して次、って具合でしたよ。「撮影時間、あと1時間です」ってスタッフの方にも急かされていましたし(笑)。

古川:(笑)。僕も、佐藤さんの撮影スケジュールを拝見したのですが、2泊で回るのは相当大変ですよね。高知の端から端まで移動していますし。

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古川:日頃の撮影も含めて、佐藤さんはシャッターを切る回数って多い写真家に入るのでしょうか。1日にどのくらいの枚数を撮影しますか?

佐藤:どうでしょう……少ないと思いますよ。写真家の中には、1日あたり2,000〜3,000枚を撮影する方がいると聞きます。僕の場合は、1日撮影しても200〜300枚くらいなので。

古川:パシャパシャとたくさん撮るのではなく、狙って撮るスタイルなんですね。

佐藤:そうですね。いろいろと経験してみてわかったのですが、端的に言うと、たくさん撮りすぎると後が大変なんですよ(笑)。とくに仕事のときは、クライアントに納品する段階である程度枚数を絞ってからお渡しするんですが。無駄に撮りすぎるとピックアップするのが大変になるので、ある程度撮影段階で絞って撮るようにしています。

古川:たしかに、そうですよね。撮影時のコンディションとかも、写真に影響を与えることがあるんですか?

佐藤:自分の調子がどうこうってことはあんまりないですね。どちらかというと、諸条件によって左右されている感覚です。代表的な例を挙げると天気ですよね。あとは、その場に面白い人がいたり、アクシデントが起きたりすることで、思いがけない写真が撮れるなんてことはあります。

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古川:高知の話に戻りますが、改めて回ってみて、高知の自然に対するイメージって変わりましたか?

佐藤:思っていたよりも険しいと感じるようになりました。今まで、高知の自然ってどちらかというと南国のような柔らかさを持っていると思っていたんです。ところが、力強い表情も見られたので、すごく険しいなと。あと、高知は岬や海が有名になりがちですが、山の比重も多いですよね。

古川:高知県は、森林率が84%と、日本で一番森林面積の割合が大きい県ですからね。高知県の自然は、また撮影してみたいと思えるものでしたか?

佐藤:もちろんです。四季ごとにどんな風に表情が変わるのか気になっているので、春や夏の撮影にまた来たいです。あと、そのときはスケジュールに余裕を持って来たいですね(笑)。

「住宅街の中、振り返るとそこには大絶景があった」展示写真を振り返る

ここからは、展示している作品を、佐藤さんの解説を挟みながらご紹介。写真展のタイトルにもある「VIVID TRIP」……すなわち「色」に注目しながらご覧ください。


「柏島」

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佐藤:高知県といえば、まずは海がセオリーと考えて撮りました。誰が撮っても同じ写真になってしまう可能性がありそうなロケーションだったので、今回は上空から撮影しています。養殖網の囲いが幾何学的で、少し不思議な写真になりました。

また、海のすぐそばに住居があるので、港町の様子もくっきりわかります。上空から俯瞰すると土地に根ざした人間の生態系が見えてきて面白いなと思います。


「伊尾木洞」

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佐藤:ここは最初車でついた時に「どこにあるんだろう?」と思ったんですが、トンネルを抜けたらいきなり絶景、という感じで驚きましたね。

高知県って、コケとかシダが多いんですが、住宅街の真裏にいきなりジャングルみたいな景色が広がっているというか。まだそこまで観光化されていないところも逆に良いなと思いました。


「安居渓谷」

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佐藤:高知の水って、ものすごく透明度が高くて綺麗なんです。ただ今回は逆に巨大な岩と激流の衝突で生まれる力強さを撮りました。こういう人を受け付けない自然の強さも高知の魅力だと思いますね。


「四国カルスト 天狗高原」

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佐藤:本当は、晴れているときに撮りたかった景色でしたが、今回は天候に恵まれず強い霧に覆われていました。ホワイトアウトの状態で、1m先も見えないくらいに霧がかっていたのですが、でもそれが逆に神秘的でした。

アイルランドか北欧のような不思議な雰囲気で、結果的にはここがすごく印象に残っています。ただここは地元の方でも、何度も通わないとなかなか満足には撮れないほど、難しいロケーションみたいですね。


「浅尾沈下橋」

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佐藤:この橋は全く知らなかったんですが、とても面白いですよね。時には猛威をふるうような自然の姿に抵抗せず、受け流すために一切の無駄を排した形で、高知の人々の歴史と知恵から生まれた合理的で美しいデザインなんだと思います。

ここではその橋をドローンで撮影して、さらにミニマルな景色として表現してみました。余談ですが、撮影中、なかなかドローンが飛んでくれず12〜3名の撮影クルーを待たせていたので、プレッシャーが強烈でした(笑)。


「高知県立牧野植物園」

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佐藤:僕自身、植物園が好きなのでよく足を運ぶのですが、いろいろ行ってきた中で比較してもすごく美しい園内でした。

写真に撮ったのは、園内の一番奥にあるゾーンなのですが、パプアニューギニアのジャングルを思い出しました。建築も美しくて、国内屈指の植物園だと思います。


「高知県立歴史民俗資料館」

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佐藤:当初は予定していなかったのですが、高知に古くから伝来している「いざなぎ流」というお祈りにまつわる撮影も行いました。昔、高知を訪れたときはいざなぎ流のお祭りを撮影したのですが、今回はそのお面をお借りして撮影しました。

本当に貴重なもので、学芸員の方をしても、これらのお面がどのように使われたかは今はもうわからないという神秘的なものです。急遽の撮影だったので、近くのカーテン屋さんから黒い布をお借りして撮影したエピソードもあります。


「足摺岬」

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佐藤:高知県の海らしい、エメラルドグリーンを切り取ることを意識して撮影しました。足摺岬で見る海は、穏やかというよりは力強い。

日本海のような自然の厳しさを感じる表情だったので、上空から撮影して、水しぶきの様子まで画の中に同居できる構図にしました。黄色い岩も独特で気に入っています。


「北川村『モネの庭』マルモッタン」

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佐藤:「モネの庭」と聞いていたので、てっきり睡蓮があると思っていたら、まだシーズンではなく、全然なくて驚きました。チューリップが咲き誇っていたので、戸惑いながらも(笑)、映える構図を探して撮影しています。


「室戸岬」

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佐藤:かの昔、空海がここで修行していたという逸話の残る場所です。正直なところ、夕日と海って、誰が撮ってもそれなりに綺麗に見えるんです。

だから、どうしたら説得力の増す写真になるのか考えました。今回は、陽の沈む前の10分間、いわゆるマジックアワーをどれだけ美しく捉えられるかと意識しています。

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佐藤:SNSでも人気の写真なのですが、ドローンライティングを利用した写真です。ドローンにライトを付けて、灯台の上を周回させつつ、30秒間の長時間露光で撮影しました。灯台そのものも十分綺麗だったのですが、より刺激的な写真を求めたいなと。撮れたときは、なかなか嬉しかったですね。

さいごに

トークと展示写真の解説とを合わせてお届けしましたが、ゆっくりとご覧いただけましたでしょうか。

今回は、イベントの最後にサイン会も開催。イベント参加者のみなさんとの交流も図れ、充実した時間となりました。

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150枚ほど用意していたチケットが、たった2日間で完売するほど大人気だった本イベント。参加者の中には、このイベントに来るために大阪から足を運んだ方までいるのだそう。

トークイベントの後半には、参加者から次々と質問も挙がるほど。活気あふれる、素敵なイベントでした……!

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美しく、強く、壮大な高知県の自然。佐藤さんの写真の魅力と合わせて、少しでも多くお伝えできていたら幸いです。それでは、今回のレポートはここまで。最後までご覧いただきありがとうございました!!!


Photo:Photoli編集部 横尾涼
Text:Photoli編集部 鈴木しの

使用したカメラ

キーワード

  • イベントレポート
  • 佐藤健寿

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