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特集 2019.01.11

「わたしだから見つけられる表情を」ーー写真家・忠地七緒に聞く、女性を撮影する上で知りたい光の話

[この記事はTURNS(第一プログレス)の提供でお送りいたします。]

ポートレートを撮影するとき、光の使い方は意識しておきたいもの。被写体の雰囲気を伝えるため、とてもとても大切な要素だからです。そんな、光の使い手として、今回Photoliで注目したのは写真家の忠地七緒さん。

自然で柔らかな女性のポートレートを数多く撮影する忠地さん。今回は、忠地さんが写真を撮影する上で意識している光やロケーションのお話や、今月から都内で開催される忠地さんの写真展「いい一日、いいわたし。」(主催/秋田県)に関するお話を伺っています。

優しく包み込むような忠地さんの写真のエッセンスを、インタビューを通してご覧いただけたらうれしいです。

1 . 写真家・忠地七緒が生まれるまで

ーー今日はよろしくお願いします。はじめに、忠地さんが写真を始めた頃のお話から教えてください。

1 . 写真家・忠地七緒が生まれるまで
忠地七緒(ただち・なお)
1987年神戸市生まれ。雑誌編集者を経て、女優・アイドルのポートレートを中心に雑誌・WEBで活躍。毎日フィルムカメラを持ち歩き、日常にひそむ奇跡のような瞬間をそっとおさめている。
Webサイト:http://naotadachi.com
Instagram:@naotadachi

忠地七緒さん(以下、忠地):こちらこそよろしくお願いします。わたしが写真を始めたのは、2015年の5月でした。新卒のときに初任給で一眼レフカメラを購入はしていたのですが、なにを撮影していいのかわからず、ずっと部屋の中で眠ったままで。ときどき神社や草花などをとりとめなく撮影するような時期を過ごしていました。

ーーそうだったのですね。その後、実際に女性を撮影するに至るまでにはいったいどのような経緯があったのでしょうか。

忠地:知り合いの女性に、勇気を出して「ポートレートを撮影させてほしい」と伝えたことが転機でした。というのも、もともとわたしは女性アイドルがすごく好きなんです。「そんなわたしが女性を撮影したなら、絶対にかわいく写せる!」という根拠のない自信があって。ただ、なかなか恥ずかしくて周りには言えなくて。悶々とした時期を過ごしていたのですが、どうしても撮影してみたい気持ちが優ってしまったんです。そこで、まずは知り合いに撮影を依頼しました。

ーー実際に撮影してみて、いかがでしたか?

1 . 写真家・忠地七緒が生まれるまで

忠地:すごく楽しかったです! 千葉県にある、レトロでかわいい電車が立ち並ぶ「小湊鉄道」で撮影したのですが、わたしも楽しかったですし、モデルの女性にもとても喜んでもらえて。

ーーへえ! それでは、その後すぐに写真家として活動をされていたのでしょうか?

忠地:いえいえ。すぐにお仕事が舞い込んで、ということではありませんでした。ただ、そのくらいの時期から、ちょうどInstagramが普及し始めていて。DM(ダイレクトメッセージ)で撮影のご依頼をいただくようなことは増えていきました。とはいっても、初期の頃は無料や数千円での撮影が多かったですね。2017年に独立して、今は雑誌・ウェブなどを中心に撮影を行っています。

ーーなるほど。当時から変わらず、女性のポートレートを中心に撮影されているのですか?

忠地:そうですね。当初は女性のポートレート撮影をフックにしながら、少しずつお仕事をいただいていました。現在は、お仕事ということであれば女性のポートレートに限らず、男性ポートレート、インタビュー撮影、ブツ撮りなども行なっていますね。初期の頃に撮影していたのが女性ということもあって、平均すると女性を撮影するお仕事が多いです。

1 . 写真家・忠地七緒が生まれるまで



2 . 忠地七緒が、女性の自然な表情を引き出せる理由

ーーそれでは、撮影に関するお話もお伺いさせてください。忠地さんが女性を撮影するときに、意識しているのはどのようなことですか?

忠地:モデルさんと、他愛もないコミュニケーションを交わしながら撮影を進めることですね。多くの場合、モデルさんとカメラマンは「はじめまして」から始まって、慣れないうちから撮影を始めるんですよね。でも、それではその人らしい表情がなかなか引き出せません。だから、撮影中にできるだけ距離を縮めるようにするんです。

ーー距離を縮めるというと、話しかける、ということでしょうか。

忠地:もちろんそれもあります。ほかにも、軽いボディタッチだったり、すごく褒めてあげたり。女性同士だからこそできるコミュニケーションがあるし、女性だから気がつくポイントもあると思っています。あとは、長時間の撮影で疲れていると感じたら、休憩を挟んだり、チョコレートなどのおやつをあげたり。

ーーそうすると、だんだんと表情は変わっていきますか?

忠地:そうですね。あとは、モデルさんの自然な表情を引き出すために、五感を動かすことも意識しています。撮られ慣れている人だと、決まったポージング・表情になってしまうことが多々あります。それだと、わたしらしい写真が撮りづらい。
だから、そういったときには、風を起こしたり水に触ってもらったりといった具合で五感に働きかける動きを付けると、だんだん表情が柔らかくなってくるんです。こちらから指示を出すのではなく、あくまでも自然な表情を探すことがポイントです。

2 . 忠地七緒が、女性の自然な表情を引き出せる理由

2 . 忠地七緒が、女性の自然な表情を引き出せる理由

ーーそういった丁寧なコミュニケーションを意識することで、モデルさんの“らしさ”があふれる写真が撮影できるのですね。

忠地:自然な表情の中には、その人の本質が織り込まれているように思うんです。だから、話したり五感に問いかけることで、本質を探し当てる。そんなことを意識しながら、撮影しています。



3 . 忠地七緒の真骨頂、光とロケーションのキャスティング

ーー忠地さんの作品を見ていると、光が印象的な写真がすごく多いように感じます。美しい光を写真に取り込むために考えていることはあるのでしょうか。

忠地:ありがとうございます! すごくありきたりな答えになってしまうかもしれないのですが、わたしは逆光と半逆光が好きなんです。だから、後ろか斜め後ろから光が差し込む様子を撮影したいと感じることが多いですね。女性を撮影したときに柔らかな光で写るので、気に入っています。

3 . 忠地七緒の真骨頂、光とロケーションのキャスティング

ーーなるほど。ゴースト(フレア)を活用した写真も多いですよね。

忠地:そうですね。日頃の作品撮り以外でも、自由度の高いお仕事の場合はフレアを入れることも多いです。わたしは「Canon EF50mm F1.4」のレンズを使用しているのですが、ゴースト(フレア)が出やすいのでお気に入りなんです。

ーー僕も使用しています! すごく良いですよね。ちなみに、カメラは何を使われているんですか?

忠地:フィルムカメラであれば「Canon EOS 1V」と「Nikon FM2」と「CONTAX TVS 2」です。どれも光が綺麗に写るし、フレアも美しく入ります。柔らかい写真のテイストが好きなので、できる限り光を選ぶときにも光のふわっと感を意識するようにしています。ただ、実際に撮影するときは直感が働いているっていう表現の方が、近いのかもしれません。

ーー面白いです。それでは、忠地さんが今「女性のポートレートを自由に撮影してください」と言われたら、どんな場所で撮影したいですか?

忠地:楽しそう、いいですね! ひとつは、水が好きなので、海辺。夕方はエモすぎてしまうから、早朝のシアンがかった景色の中で撮影したいですね。もしくは、モデルさんの思い出の場所や生まれ育った街。モデルさんが自然体でいられる場所を選ぶのかなと。

3 . 忠地七緒の真骨頂、光とロケーションのキャスティング

3 . 忠地七緒の真骨頂、光とロケーションのキャスティング

ーー「どうしてもこの光が使いたい!」ってことはあまりないのでしょうか?

忠地:そうなんです。それよりも、モデルさんが緊張しない場所を選ぶことが多くて。光に関しては、その場所にあるものを活かして使うことが多いです。モデルさんの本質や人間らしさ、みたいなものを伝えたいと思って撮影しているので、光ありきの撮影方法になっていないのかもしれません。



4 . わたしがわたしに戻る地。忠地七緒が秋田で感じたこと

ーーここまで、忠地さんのキャリアや撮影方法について伺っていきましたが、今回の写真展「いい一日、いいわたし。」についても聞かせてください。今回は秋田県での撮影とのことでしたが、秋田県を訪れたのは初めてでしたか?

忠地:写真を始めたばかりの頃に、一度だけ。当時は、主人と旅行で訪れました。日頃、お仕事で地方に足を運ぶことも多いのですが、写真の撮影を目的に秋田に行くのは初めてでしたね。

ーー実際に足を運んでみて、他県と比べて違ったことやギャップを感じたことなどはありましたか?

忠地:夏の終わりに行ったのですが、とにかく光が美しかったです。それに、新しい建物が少ない分、どの建物もレトロでかわいらしくて。写真が好きな人にとっては、魅力的な街だと感じました。自然も多いので、どこで撮影しても絵になりますしね。とくに、県の南部にある羽後町が、静かで、空気が澄んでいて、人もおだやかで、大好きになりました。

4 . わたしがわたしに戻る地。忠地七緒が秋田で感じたこと

ーー写真展に展示する写真にも、自然の様子が描かれていますよね。

忠地:そうなんです。今回、展示する作品に、トンボを撮影した写真があるんです。普段だったらトンボなんて絶対に撮らない……はずなのに、撮っているんです。しかも、ベストタイミングを狙って10分待機してまで撮影しました。そのときにふと思ったんですよね。これって、秋田にいる今のわたしに、余裕があるからこそ撮れる写真なのだろうなって。

4 . わたしがわたしに戻る地。忠地七緒が秋田で感じたこと

ーー余裕があるからこそ撮れる写真、ですか?

忠地:そうです。トンボだけではなく、秋田で感じた「空が綺麗」「コーヒーがいい香り」という小さな瞬間の積み重ねで日々はできているし、その積み重ねが穏やかな一日を作るのだと感じたんです。そして、そんな日々が折り重なることで「いいわたし」になっていくのだと。

ーータイトルの「いい一日、いいわたし。」には、そんな秋田で感じたさりげなくて穏やかなしあわせが詰まっているんですね。
それでは最後に、今回の展示に足を運んでくださる方に向けて、改めて写真展に込めた思いを教えていただけますか?

忠地:今回の展示では、秋田で拾い集めた小さな魅力のカケラを、スペースの中に散りばめています。秋田で過ごしたことで、わたしはまるで本当の自分に戻ったような気持ちを味わいました。
せわしない都会での生活の中で失いかけた穏やかさを、秋田で取り戻すことができたんです。だから、展示を通して、そんな秋田のゆるやかさを感じていただきたいですし、そのまま秋田に行ってみたいと感じていただけたらうれしいです。

ーー素敵なお話をありがとうございました!

4 . わたしがわたしに戻る地。忠地七緒が秋田で感じたこと

4 . わたしがわたしに戻る地。忠地七緒が秋田で感じたこと

4 . わたしがわたしに戻る地。忠地七緒が秋田で感じたこと

展示情報

会期2019年1月18日(金)〜2月7日(木)
会場コマグラカフェ
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-28 大住ビル3F
0422-23-6450

※写真展会場はカフェとなりますので、ご来店の際は1オーダーをお願いいたします。
営業時間【日〜火】11:00〜20:00
【水〜土】11:00〜22:00

4 . わたしがわたしに戻る地。忠地七緒が秋田で感じたこと

主催/ 秋田県



編集後記

飾らず、自然体な忠地さんの写真。バタバタとまるで流れるように過ぎ去る日々の中で忠地さんの作品を見つめてみると、自分のあり方に思いを馳せるような不思議な感覚を味わいました。

一つひとつの作品に織り込まれていたのは、ありのままを美しく伝えるための忠地さんの工夫の数々。女性らしいしなやかな気遣いによって、人の心を魅了する優しい作品が生まれていることがわかりました。

冬の寒い中ではありますが、忠地さんの作品の数々はきっと心に温かな光を灯してくれることでしょう。お時間のある方は、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。それでは、最後までご覧いただきありがとうございました。

interview : Photoli編集部 横尾 涼
text : Photoli編集部 鈴木しの

キーワード

  • Akita Fan Weeks

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