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フィルムカメラを始めてみよう

ぬくもりを感じるような質感が魅力のフィルム写真。

SNSでいいなぁと思った写真がフィルム写真だった、憧れの写真家が使っているカメラがフィルムカメラだった、なんて経験をしたことがある方もいるかもしれません。

「自分も始めてみたいけれど、フィルムって難しそう…」

「撮った写真はスマホやPCで見られるの?」

「そもそも何から始めればいいのか、よくわからない…」

そんな方が気軽にフィルムカメラにチャレンジできるよう、<フィルムカメラの始め方>をまとめました。

カメラの選び方から写真を受け取るところまでの手順を、フィルム写真の魅力とともにお伝えします。

入門におすすめのカメラやフィルムもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。

わざわざフィルムで撮る魅力

デジタルカメラと比べると、なにかと手間のかかるフィルムカメラ。それでもフィルムの魅力に取り憑かれてしまう人は、後を絶ちません。いったいどんなところに、その魅力があるのでしょうか?

温かみのある風合い

写真ができる工程の違いを言葉で表すなら、フィルムは「焼き付ける」、デジタルは「記録する」。フィルムカメラで撮った写真からは、その場の空気に触れるような独特のぬくもりを感じられます。今は現像したものをスキャンしてデータで閲覧するのが主流なので完全にアナログとは言えませんが、それでもその有機的な写りはデジタルではなかなか再現できないものです。

「レトロでエモい」

若い世代からは、「どこか懐かしい」「レトロでエモい」と評されるフィルムカメラ。そもそも、デジタルカメラが主流になったのはここ20年ほどのこと。それ以前の写真はほとんどがフィルムで撮影されていたので、フィルムの写真を見ると「懐かしい」と感じる人が多いのも道理ですね。先ほどお話しした温かみのある描写もあわせて、<記録>ではなく<記憶>と出会うような感覚を味わえるのもフィルム写真の魅力の一つです。

現像するまでの“わくわく”

フィルムカメラにはモニターがないため、デジタルカメラのように写りを確認しながら撮影することができません。どんな写真が撮れているのかは、現像するまでのお楽しみ。そのタイムラグがあることで、楽しかった時間や美しかった景色のことを改めて思い出す時間を持てます。待った分だけ、いい写真が撮れていたときの喜びもひとしおです。

誰もがスマホを持ち歩き、手軽に写真を撮れる時代になったからこそ、フィルム写真の良さが際立つようになったともいえます。

それではいよいよ、フィルム写真を始めるにはどうしたらいいのか?を詳しく見ていきましょう。

STEP1 カメラを選ぶ

ひとくちに「フィルムカメラ」といっても、その種類はさまざまです。レンズ交換式の本格的なカメラから、とっても手軽に撮影できるコンパクトカメラ、チープさが魅力のトイカメラなど多種多様。たくさんの種類があるぶん、「どうやって選べばいいのかわからない!」と思う方も多いかもしれません。ここでは、どうやって選ぶのか、どこで手に入れるのか、その方法をご紹介していきます。

フィルムカメラの選び方

写り、操作性、大きさ、見た目……カメラ選びにはさまざまな要素があります。中でも重要なのは、使用できるフィルムのフォーマット。初心者で不安のある方は、「35mmフィルム対応」のカメラを選ぶのがおすすめです。フィルムカメラの多くが35mm判なので、フィルム自体も手に入りやすく、現像時もお店を選びません。

とはいえ、カメラ選びで一番大切なのは、「自分のテンションが上がるかどうか」。結局使わなくって置物になってしまうのでは意味がありません。撮影に持ち出したくなる、愛着のわく一台を選んでみてくださいね。

フィルムカメラはどこで買える?

フィルムカメラは現行品もありますが、ほとんどが中古品。中古カメラを取り扱っているお店や、フリマアプリなどでも購入できます。中古のカメラを買うときは、きちんと写真が撮れるかどうかをしっかりと確認してから購入しましょう。

最初は大手カメラ店で店員さんに相談しながら購入するのが安全です。大手カメラ店が近くにない場合は、現行品をオンラインの正規販売店で購入するという手もあります。種類は限られますが、まずは確実に動くカメラでフィルムに慣れ親しんでみるのもおすすめです。

STEP2フィルムを用意する

カメラだけでなく、フィルム自体にも色々な種類があります。まずはカメラに対応する大きさのフィルムを選ぶことが大切です。35mm判カメラには35mmのフィルム、中判カメラには中判のフィルムしか原則的には使用できません。

それから、「ISO」を選びます。「ISO」は簡単にいうと、明るさを決める要素の一つです。撮影シーンや仕上がりイメージに合うものを選びましょう。デジタルではISOをカメラ側で設定しますが、フィルムの場合はフィルムによってISOが固定されています。例えば、ISO800のフィルムを入れたら、基本的には撮り切るまでISO800の状態で撮影することになります。

フィルム写真の色味や写りは、使用するカメラやレンズ、現像するお店によっても変化しますが、使用するフィルム自体によっても変化します。Photoliのインスタグラムではフィルムごとの作例も紹介しているので、参考にしてみてくださいね。

フィルムはどこで買える?

カメラ屋さんや家電量販店、オンラインで購入することもできます。大きさの違いだけでなく、モノクロフィルムやポジフィルムなどさまざまな種類がありますので、間違えて購入しないように注意が必要です。

初心者におすすめのフィルム

難しいことは考えずにまずは撮ってみたい!という方におすすめのフィルムは、「FUJIFILM 400」。比較的手に入りやすく、ISO400のため屋外はもちろん、明るめであれば屋内でも撮影できます。撮影シーンをあまり気にせずに使えるので、初心者にも扱いやすいフィルムです。

日中の屋外での撮影のみであれば、「FUJICOLOR 100」を使ってみるのもおすすめです。ISO100のため明るい場所での撮影に適していて、 より鮮明な仕上がりが期待できます。

STEP3カメラにフィルムを装填

カメラとフィルムが準備できたら、いよいよ撮影。まずは裏蓋を開けて、カメラ本体にフィルムをセットします。

カメラによって装填方法は異なりますが、ほとんどの場合、ウェブや動画サイトで検索すれば詳しい手順を確認できます。<カメラ名 フィルム 入れ方>などで検索してみるのがおすすめします。

STEP4 いよいよ撮影!

これで準備は完了です。あとは、写真を撮るだけ!オートのカメラでは思いのままにシャッターを切り、マニュアルのカメラでは丁寧に写真と向き合う撮影体験が待っています。

どんな写真が撮れているのかわくわくしながら、フィルムを最後まで巻き上げるまでとにかく楽しんで撮影しましょう。

STEP5 フィルムを巻き戻す

撮り切ったら、フィルムを巻き戻します。パトローネ(フィルムの入っている筒)から長く伸びているフィルムを、再び収納する作業です。この際の注意点は、巻き戻し切るまで絶対に裏蓋を開けないこと。途中で開けてしまうとフィルムが感光して、せっかく撮った写真が最悪の場合、真っ黒になってしまいます。わざと感光させるという表現方法もありますが、そうでない場合は裏蓋を途中で開けないように注意して、最後までしっかり巻き戻しましょう。巻き戻しがきちんとできているか不安な場合は、そのまま裏蓋を開けずに現像するお店へ持っていくことをおすすめします。

巻き戻しが完了したら、フィルムを取り出します。これで撮影は終了!あとは現像するだけです。

STEP6 現像に出す

撮り終えたフィルムは、カメラ屋さんや家電量販店など、フィルムの現像を取り扱っているお店に持ち込みます。郵送で受け付けているお店もあるので、近くに現像できるところがない場合も安心です。

フィルムを現像すると、「ネガ」とともに、「データ」または「プリントした写真」を受け取ることができます。データで受け取る場合は、CD-ROMにしてくれることがほとんどです。スマホ転送ができるお店もあるので、使いやすい方法を選んでくださいね。

現像には少し時間がかかります。写真ができあがるまでわくわくしながら待つ時間は、せわしない今の時代にはなかなか経験できない贅沢なもの。はやる気持ちをぐっとこらえながら、のんびり構えて待つのもいい体験です。

ちなみに、「データがあるからいいや」とネガを破棄するのはおすすめしません。撮影枚数が増えてくるとちょっとかさばりますが、データのように消えてしまうこともなく、スキャンし直すことも可能です。また、ネガからプリントすると、データをプリントするよりも美しい仕上がりになります。最初のうちは「必要ないかな?」と思うかもしれませんが、捨ててしまうと、フィルムにすっかりハマったころに後悔しかねません。「やっぱり取っておけばよかった……」とならないように、ネガは大切に保管しておきましょう。

Photoliフォトグラファーの1台目と、おすすめフィルムカメラ

ここまで読んで、「フィルムカメラを始めよう!」と思っても、やっぱりその種類の多さに、どのカメラを手に入れるべきか迷ってしまうかもしれません。そこで、3人のフォトグラファーに「初めて使ったフィルムカメラ」と「入門におすすめのフィルムカメラ」を聞いてみました。

フォトグラファー 涼

1台目のフィルムカメラ…オートボーイルナ(コンパクトカメラ)

レンズ交換式やフルマニュアルのフィルムカメラは難しいイメージがありなかなか手が出なかったので、「とにかくフィルム体験がしたい!」の気持ちで操作の簡単な全オートのコンパクトカメラを選びました!オートボーイが比較的手に入りやすかったのも理由のひとつです。

入門におすすめのカメラ…オートボーイシリーズ(コンパクトカメラ)

敬遠していたフィルムカメラを気軽に使い始めることができ、体験してみたかった「フィルムらしい写り」にも満足したからです。難しそうだから、と思ってなかなか始められない方にはぴったりのカメラだと思います!

フォトグラファー 葵

1台目のフィルムカメラ…NikonFE(一眼レフカメラ)

フィルムを始めてみたくて、フリマサイトで”フィルム一眼レフ”で探して、見た目に惹かれ直感で選びました。フィルムカメラについて調べている中でオートボーイやハーフカメラなども目につきましたが、自分でピントを合わせたり色々いじってみたかったのでこれに決めました。

入門におすすめのカメラ…OLYMPUS PEN EE3(コンパクトハーフカメラ)

初心者でいきなりフィルムの一眼レフを手に入れて、たしかに楽しかったのですが設定が色々あって難しい故に失敗も多く、よくフィルムを嫌いにならなかったなと思います。フィルムを始めて少しあとにOLYMPUS PEN EE3を手に入れて、その手頃なサイズ感や操作のしやすさからこちらを持ち歩くことが増えました。コスパも良くてとにかくどんどんシャッターを切れるのもよくて、そういう意味でも初心者にはハーフカメラをおすすめするなあと思います。

フォトグラファー ENA.

1台目のフィルムカメラ…OLYMPUS PEN EE3(コンパクトハーフカメラ)

フィルムカメラに詳しい人に聞いて、初心者にいいよ!とおすすめされたから。私自身、フィルムの値段が高くて手を出すべきか迷っていましたがハーフカメラという存在を知り、撮ってみようかなという気持ちになれました。

入門におすすめのカメラ…OLYMPUS PEN EE3(コンパクトハーフカメラ)

見た目の可愛さ・コンパクトさ・手に入りやすさもそうですが、難しい設定などが必要なく、何も考えずにパシャパシャ撮れるところがいいと思います!フィルムの値段が高い今の時代におすすめするなら、ハーフカメラじゃないと声を大にしてはすすめられない……という気持ちがあるからです。赤ベロの機能があることで露出不足などの失敗を防げるので、初めての方にもかなり安心できるポイントになるかと思います。自分自身の最初の一台でもある点からもEE3をおすすめします。

最初の1台を選ぶ理由は人それぞれ。おすすめのカメラを参考にしつつ、自分の欲しいカメラを見つけてみてくださいね。

また、とにかく一度フィルム体験をしてみたい!という方には、「写ルンです」もおすすめです。「撮る・現像に出す・撮れた写真を受け取る」というフィルム撮影の一連の流れを体験してみるだけでも、デジタルとは違う、フィルムならではのおもしろさを感じられるかもしれません。

まとめ

デジタルカメラでは、たくさん撮って、失敗した写真は消す、というのが一般的。ですが、フィルム写真では一枚一枚を大切に撮ることになり、失敗すらも愛おしく感じられます。目を瞑ってしまった写真も、ブレてしまった写真も、その日の空気を焼き付けた大切な一枚。

誰もが気軽に写真を撮れる時代だからこそ、フィルムで「消費しない写真」を味わってみるのはいかがでしょうか。きっと、デジタルとは違う、あたたかな写真の魅力を経験できるはずです。